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帯状疱疹(たいじょうほうしん)について

帯状疱疹(たいじょうほうしん)について

令和5年10月1日 発行

帯状疱疹は年間1000人中5人がなると言われます。60代を中心に50〜70代にみられますが、過労やストレスで若年層にも発症します。帯状疱疹はヘルペスウィルスの一種である水痘帯状疱疹ウィルスが原因です。この水痘帯状疱疹ウィルス、9つあるヘルペスウィルスの中でも年齢に大きく依存するのが特徴です。また、初診時にすでに湿疹が広範囲に及んでいたり、強い痛みがあるケースでは、後に強い痛みが残ったり、痛みからの回復に時間を要することが多いです。みなさんの知人で帯状疱疹にかかって痛みで大変苦労した、あるいは入院まで至ったという話を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ところが発症したすべての方に最初から激しい痛みがあるわけではありません。はじめは軽い筋肉痛に似た痛み、やけどのようなひりひり程度の痛みのことが多いです。かゆみを伴う場合もあります。見た目も最初はダニに刺されたときのような小さな赤い発疹程度なので初期は見過ごされがちです。しかし症状が進行してから治療となると帯状疱疹後神経痛というやっかいな後遺症が残ってしまいます。これは急性期の炎症によって神経に強い損傷が生じたことで起こります。痛みには個人差があり、少しの痛い た痒が ゆさでおわってしまうこともあれば、夜も眠れないほどの痛みになってしまう場合もあります。

帯状疱疹の痛みは主に2種類あります。1つは急性期痛です。急性期痛は皮膚や神経の炎症による痛みです。発症から2、3週間の間の痛みはこの場合が多いです。もう1つは急性期の後にくる痛み、帯状疱疹後神経痛です。これは皮膚や神経の炎症は治っていて、急性期の炎症によって引き起こされた神経の損傷によるものです。

次のような人は帯状疱疹後神経痛が残る可能性が高いので要注意です。

・皮膚症状が重症

・夜も眠れないほどの強い痛み

・60歳以上

また、合併症もあります。一般的なものとしては発熱、頭痛です。顔面の帯状疱疹では角膜炎や結膜炎などを起すことがあり、悪化すると視力低下や失明に至ることもあるので注意が必要です。その他まれに、耳なり、難聴、顔面神経麻痺が生じることもあります。これをラムゼイハント症候群と呼びます。

帯状疱疹になってしまったらどうすればよいのでしょう。一番大切なことは抗ヘルペスウィルス薬の内服と安静です。

抗ヘルペスウィルス薬はウィルスの増殖を抑えることで急性期の皮膚症状や痛みを和らげ治るまでの期間を短縮し、合併症や後遺症を抑えることが期待できます。必要に応じて消炎鎮痛薬が使われたり痛みに神経ブロック注射をすることもあります。内服薬は効果が表れるまで2日位かかりますので、初めの2日位は内服しているにもかかわらず湿疹が広がったり痛みが強くなることがあります。

日常生活としては十分な栄養と休養をとることが大切です。風邪をひいたと考え無理のないようにしてください。湯舟につかると痛みが和らぐことが多いです。患部はこすらずやさしく撫でるように石鹸で洗ってください。水疱瘡にかかっていない乳幼児に水疱瘡を発症させることがあるので乳幼児との接触は控えてください。

状疱疹にならないためにはワクチン接種が有効です。ワクチンには2種類あり、そのうちのひとつは不活化ワクチンです。これは2か月あけて2回の接種が必要ですが予防効果は約97%で高いです。もう一つは水疱瘡の予防にも使われる生ワクチンです。こちらは接種は1回で済みますが予防効果は約61%です。生ワクチンのほうが安価で接種できます。目黒区では50歳以上は一部助成の対象ですのでこれを機に接種をご検討されるのもよいと思います。接種する際は不活化ワクチンか生ワクチンかを決定したうえで目黒区保健予防課に予診票発行の申請をします。ワクチンの決定に関しては事前に医療機関にご確認ください。

(M・M記)

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