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頭痛第二弾 ~緊張型頭痛~

頭痛第二弾 ~緊張型頭痛~

平成31年2月1日 発行

前回は片頭痛について解説いたしました。今回は、頭痛で最も多い、緊張型頭痛について解説と治療方法についてご説明いたします。

緊張型頭痛は、頭痛の50~60%を占め、最も多く、片頭痛と同様に女性に多い頭痛です。名前のごとく、緊張によりおこる頭痛で、精神的な緊張、ストレスのみならず、頭部の周囲や首の筋肉、筋膜の緊張が原因と言われております。ですので、運動不足の方、ストレスの多い方、寝不足の方、喫煙者や姿勢の悪い方に非常に多い頭痛です。肩こり、首の痛みからせり上がる様な痛みは典型的ですが、両側のこめかみの締め付けるような痛みや圧迫されるような痛みを感じることも多い頭痛です。ただ吐き気を伴うことは少ないのですが、慢性化してくると体動で増強し、嘔気を伴うこともあります。特に最近は、スマートフォンやパソコンを長時間しかも同じ姿勢で使用する方が多く、姿勢の悪さから、ストレートネック(前方に湾曲するべき首が猫背姿勢で真っすぐから後方に湾曲となっている状態)をおこし、首こり、肩こりの原因となっております。体重の10%前後と言われている頭部が体の一番上にあり、それを支えているのが、首です。この首は、頸椎とそれを取り巻く筋肉からなっております。その首の筋肉はほとんどが後ろ側にあり、頭を後ろから支えています。そのため、ストレートネックや前かがみ姿勢の方は常に首の筋肉に緊張がかかった状態で、血流障害から痛みが誘発され、頭痛へと進展していきます。その痛みが続けば続くほど、痛みを抑える脳の働きが衰えて、さらに痛みが増強され、慢性緊張型頭痛へと移行します。この悪循環を解消する事こそが、緊張型頭痛の根本治療となります。

仕事中など忙しい時に緊張型頭痛がひどくなった場合は、まずは自分に最もあった頭痛薬を服用しましょう。鎮痛薬のアセトアミノフェンや抗炎症鎮痛薬のバッファリン、イブプロフェンやロキソプロフェンの服用で急場を凌ぐことです。その他筋弛緩薬のチザニジンの併用も効果があります。また抗不安薬であるエチゾラムは不安や緊張を和らげつつ、筋弛緩作用があるため併用は効果的です。その他抗うつ薬のアミトリプチリンも効果があります。

ただこれらの内服治療は、一時的な作用で持続は短いため、慢性化する前に根本的な治療を行っていくことです。日ごろのリラックス、ストレスの解消や十分な睡眠は必須です。仕事中の姿勢改善やストレッチングも効果があります。またマッサージや整体で筋肉をほぐしたり、姿勢を正すことも効果がありますが、頭痛まで進展した筋の緊張を取り除くのは、局所の針・お灸やマッサージのみでは不十分です。やはりご自身の体全体の筋肉を動かして首・肩の筋肉の血行を改善する事が必要です。おすすめは、ウォーキング、スロージョギングです。肩を大きく前後に振り、若干大股で歩きましょう。肺を大きく膨らませることで、理想の姿勢で理想の首の並びを維持できます。肩を前後に振ることで首、肩の筋肉の血流は改善し、発痛物質を除去します。また肺を大きく膨らますことは、きれいな酸素を全身に流し、さらに免疫力を上げます。仕事で忙しく運動の時間が作れないかたは、是非ショルダーバッグからリュックサックタイプのバッグに変更し、大股で通勤しましょう。若干体が暖かくなる程度のスピードが理想です。頭痛を改善するために、是非運動靴に履き替えて、外に飛び出しましょう。

(H・I記)

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インフルエンザ

インフルエンザ

平成30年12月3日 発行

いよいよ寒い季節がやってきました。冬といえば風邪、インフルエンザのシーズンです。インフルエンザは、普通の風邪とは違って、突然の高熱と全身のだるさ、筋肉痛などの全身症状です。通常、高熱が数日持続し、1週間程度で回復します。時には、肺炎や脳症などの合併症を伴い重症になることもあります。流行は通常11月~3月頃までです。

では、もしインフルエンザかな?と感じたら、医療機関を受診して検査を受けることになります。発熱後6時間以上経過してからの検査が陽性率が上がるといわれております。咽頭後壁ないし鼻腔内にスワブ(綿棒のようなもの)を挿入して、咽頭粘液を採取しますので痛みが生じます。高熱で苦しいときに、痛みを伴う検査を何度も繰り返されることは患者様にとってつらいことです。検査のタイミングを見計らって、医療機関を受診しましょう。ただ、発熱直後のウイルスが少ない時期は正確に診断できないことがあります。そこで、検査で「陰性」であっても、疑わしい場合は翌日も検査する事があります。

インフルエンザと診断をされたら、どのようなお薬が最適な治療薬なのか?ということが次に大切になります。今年度からはまた新しいタイプの治療薬が追加されましたので、患者様に最適な治療薬の提供ができるようになってまいりました。

インフルエンザ治療は、症状を緩和する対症療法とウイルスを増やさない抗インフルエンザ薬があります。

1.対症療法:発熱・咳・痰・倦怠感などの対応

2.抗インフルエンザ薬:通常、発熱後2日以内に使用します

インフルエンザに抗生物質は効きません

抗インフルエンザ薬の治療効果は、発熱期間を短縮するものです。また、ウイルスの増殖を防ぐことで、周囲の方への感染の拡大抑制効果もあります。では、インフルエンザの治療薬にはどのようなものがあるのでしょうか?現在は、5種類の抗インフルエンザ薬があります。薬の剤型も5種類あります。1.カプセル(タミフル)、2.錠剤(ゾフルーザ)、3.粉(タミフル)、4.吸入(リレンザ・イナビル)、5.点滴(ラピアクタ)。患者様の年齢や体格(体重)と日頃の服薬状況・職場復帰など、生活環境に適した治療薬の選択ができるようになりました。

抗インフルエンザ薬を選択する目安

1:タミフルを選ぶ目安

5歳未満児の第1選択薬。体重37.5Kg未満はドライシロップ、体重37.5Kg以上はカプセルを服用します。2018年からジェネリック医薬品も発売され、中学卒業後の人で医療費を抑えたい人にも対応できます

2:リレンザを選ぶ目安

吸入薬。5日間連続で1日2回吸入します。成人も子どもも同じ量を使用

・メリット:イナビルと比較すると、10歳未満児で体格の良い人でも十分量の薬を投与できます

・デメリット:イナビルと比較すると、合計10回吸入するので、保護者が毎回吸入の介助(手伝い)ができないご家庭にはやや不向きな印象です

3:イナビルを選ぶ目安

吸入薬。1度の吸入で治療完結。10才未満児は2吸入、10歳児以上は4吸入します

・メリット:リレンザと比較すると1度の吸入で治療が終了するので、忙しいご家庭向きです

・デメリット:リレンザと比較すると10才未満児で体格が良いお子さんには、薬の量が少なめになる印象です。

4:ゾフルーザ錠を選ぶ目安

錠剤。1回の服用で治療が完結します。年齢と体重により服用量が変わります。 日頃から上手に錠剤が飲める人にお勧めします。体重10Kg以上のお子さんから服用できる決まりです。

5:ゾフルーザ顆粒(未発売)を選ぶ目安

顆粒。1回の服用で治療が完結します。体重20Kg以上から服用できます。錠剤と同様で年齢と体重により服用量が変わります。ゾフルーザ錠と異なり体重10Kg~20Kgの方は服用できません。

6:ラピアクタを選ぶ目安

点滴が必要な注射薬です。経口摂取艱難な患者様、点滴で早期の社会復帰を望むような患者様に適しております

これからのシーズン、高熱が出て、全身症状が強く、いつもの風邪とは違う、と感じたら早めに医療機関を受診して、インフルエンザと診断を受けたら、最適の治療薬を選択してゆっくり体を休めましょう。

(R・S記)

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片頭痛

片頭痛

平成30年10月1日 発行

頭痛を全く感じたことがない方はいないと思います。またその頭痛で恐怖を感じたことはないでしょうか?でも頭痛をある程度知っておけば怖がる必要はありません。

頭痛には脳の中に出血、梗塞、脳動脈解離や脳腫瘍などが起こってから痛みだす二次性頭痛と、検査で何も異常のない一次性頭痛があります。この両者を判断するには画像検査が必要です。でもすぐに頭部MRIやCT検査が出来ないときには、その頭痛の性状などで判断します。脳の中で何か起こって感じる二次性頭痛の多くは急激な発症です。しかもすぐに消失するものではなく、軽減しても持続する頭痛です。さらに頭痛以外に嘔気・嘔吐、意識障害、上下肢の麻痺・痺れやめまいなど、その他症状を伴います。

この様な頭痛では、緊急性があるため医療機関への早い受診が必要です。この様な緊急性のある二次性頭痛の中に、脳の中に何の異常もない頭痛が含まれており、それが片頭痛や群発性頭痛です。今回は片頭痛に関して解説して参ります。

典型的な片頭痛は、頭のどちらかに偏った片側性で拍動性のがんがんする痛みです。さらに随伴症状で嘔気・時に嘔吐を伴い、体動で増強し、光や音でさらに症状が悪化します。もちろん片頭痛と言う名の如く、片側性の頭痛が多いのですが、頭部全体の痛みや後頭部から起こる頭痛もあり、70~80%は女性です。

20~30%の患者さんに何らかの前兆を認めます。前兆の特徴的なものは閃輝暗点といい、視野の中にギラギラしたものが見え始め、徐々に拡大、閉眼でも片目でも見え、視野欠損を伴います。その他の前兆にはめまい、顔面・四肢のチクチク感や変な臭いを伴うこともあります。

時間は20~60分程度、その後に片頭痛を発症します。片頭痛が起こらず、前兆のみで終わる場合もあります。

ただ多くの片頭痛は、前兆を伴わず、急に痛みが起こります。頭痛は数時間から3~4日程度続く事が多く、生活に支障をきたす様な頭痛です。

また片頭痛の多くには、誘発因子があります。例えば、女性では毎月の生理の前に頭痛が起こる場合、雨が降ると痛くなることや、パソコンの光(ブルーライト)、太陽の光によって痛くなることもあります。その他睡眠不足、精神的・肉体的ストレスなどからの誘発や芳香剤、食事(チョコレート、中華料理、コーヒー、チーズや飲酒など)からの誘発もあり得ます。

頭痛治療の基本は、これらの誘発因子を見極め、可能な限り誘発されない環境を作ることです。それでも頭痛が起こる時には、内服薬を選定します。内服薬は、頓服としての痛み止めと予防薬に分かれます。頓服薬には、通常の抗炎症鎮痛薬(バッファリン、ロキソプロフェンなど)と、片頭痛用のトリプタン系薬剤(スマトリプタンなど)があります。

まずは比較的安価な抗炎症鎮痛薬から選び、効果を図ります。内服のタイミングは、前兆のある場合は痛くなる前の前兆の時に内服をします。痛みが悪化してからでは効果は期待できません。若干早めのタイミングでの内服がベストです。それでも効果がないときには、トリプタン系薬剤を用います。

現在5種類が保険適応となっており、初代のスマトリプタンだけは点鼻薬や自己注射薬があります。これは前兆がなく、急激な発症で嘔気・嘔吐を伴い内服が間に合わない場合に用い、効果の発現も早いものです。

しかしこれら頓服薬の使用頻度が月に3回~5回と増えてきた時や起床時からの頭痛など頓服効果が期待出来ないケースでは、予防薬が必要です。さらに使用頻度が増えることで、副作用の増強や乱用性頭痛と言って、使用が増えることで頭痛がさらに悪化する場合があります。

この様な場合も、予防薬を選びます。予防薬は、漢方薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、降圧薬などがあり、これらを患者さんの年齢、性別や誘発因子などから選びます。予防薬の内服で、頓服薬を全く内服しなくなった患者さんもおられます。

以上のように頭痛、特に片頭痛は、かつてより多くの薬剤の開発や発症機序が解明され、コントロール可能となって参りました。

頭痛の経験がある方は一度頭痛外来で相談してみてください。今回は片頭痛について解説いたしましたが、その他、片目の奥のガンガンする痛みで、目の充血や鼻閉が特徴的な群発性頭痛や緊張型頭痛があります。

これらの解説は次回とさせていただきます。ご拝読ありがとうございました。

(H・I記)

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麻しん(はしか)は、怖い病気です。

麻しん(はしか)は、怖い病気です。

平成30年8月1日 発行

あなたが平成3年以降の生まれでしたら、麻しん予防接種を2回定期接種として受けられています。よって、あなたは麻しんに罹ることは、(2回受けていれば)ほぼありません。

あなたが昭和52年から平成2年生まれでしたら、麻しん予防接種を1回定期接種として受けられています。1回では麻しんに罹る可能性があります。(中には1回も受けていない方がいます)

あなたが昭和52年以前の生まれでしたら、幼少期麻しんに罹ったか?任意接種として麻しん予防接種を1回、あるいは2回受けたか?です。

あなたが麻しんに罹ったことがない、かつ麻しん予防接種を1回も受けていない人でしたら、いつか麻しんウイルスに出会った場合、100%麻しんに罹ってしまうでしょう。

是非、近いうちに麻しん予防接種を2回(少なくとも1か月以上あけて)受けて下さい。

そして、あなた自身とまだ予防接種を受けられる年齢に達していない赤ちゃんを麻しんから守ってあげて下さい。

2018年3月23日4年ぶりの麻しん患者が沖縄県で出ました。タイで感染した旅行者でした。その人から2次、3次と感染が拡大し、5月上旬までに沖縄県では99人麻しんに罹りました。その7割は予防接種を受けていない人です。また患者の7割は20代から40代でした。人口の95%が麻しん予防接種を2回受けていれば、麻しんの流行は起きなくなります。しかしながら、平成3年以降の生まれの世代でも麻しん2回接種を完了している人の割合は、90%にも達していません。そこで沖縄県では乳児を守るために、4716人の乳児(6~11か月児)に緊急接種を行いました。

麻しんがなぜ怖い病気かと言いますと、非常に伝染力が強いウイルスなので、麻しんに罹ったことがなく予防接種もしていない人は、ほぼ100%感染してしまうのです。感染するとウイルスは免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、一過性に強い免疫機能抑制状態を生じさせるため、麻しんウイルスによるものだけでなく、合併した別のウイルスや細菌などによる感染症が重症化してしまいます。

麻しんに罹ると約1000人に1人、死亡します。乳幼児では肺炎が、成人では脳炎が最大の死亡原因となっています。まれに失明することもあります。

もう一つ、是非知っておいてほしい怖いもの、稀ですが麻しん合併症の一つであるSSPE亜急性硬化性全脳炎(Subacute sclerosing panencephalitis)です。特に2歳以下で麻しんに罹った場合、平均7年後に多様な神経症状が出現し多くの場合やがて死に至ります。これは麻しんウイルスが脳内に残存し、脳を破壊していくからです。これらの怖い病気は2回の麻しんワクチン接種で予防することが出来ます。

2015年3月27日WHO西太平洋地域事務局が日本は麻しん排除状態にある、と宣言したことをご存知でしょうか。遺伝子を調べることにより、その麻しんウイルスの由来を知ることができます。日本土着の麻しんウイルス株、遺伝子型D5は2010年5月を最後にいなくなりました。2007年麻しん輸出国と揶揄された日本ですが、今では輸入国になりました。

観光立国を目指し、さらに2020年東京オリンピックを開催するのですから、麻しん輸入を阻止するためにも、観光、交通機関に従事する者は、特に麻しんの抗体価を確認するか、あるいは予防接種を2回受けておくことが必要です。

また平成19年厚労省告示第442号において、「医療、福祉、教育に係る者について予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨する」となっています。この告示では対象を上記の場において実習がある者、ということですが、常時上記の場において従事しているものについて、必要があることは言うまでもありません。

結論としましては、怖い麻しんの流行をなくすため、麻しんに罹る可能性のある人は、ワクチン接種を受ける、特に幼児は言うまでもなくです。さらに医療、福祉、教育、観光、交通に係る人にとってワクチン接種は必須です。こうして人口の95%が麻しん予防接種を2回受け、麻しんの流行がない国に一日も早くしていきましょう。

注、麻しん風しん混合ワクチンの供給は最近改善して来ましたが、場合によっては予約を必要としますので、受診前に確認することをお勧めします。

(K・N記)

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舌下免疫療法のその後

舌下免疫療法のその後

平成30年6月1日 発行

いよいよ6月に入り花粉症の治療薬、舌下免疫療法の開始時期到来です。今年の花粉の量は、思ったよりも多く、2月~4月にかけてかなり苦しまれた方は多いと思います。それは、今年がここ10年間の中では最も多くスギ・ヒノキ花粉が飛散した年だからです。6月に入ると花粉症の時期のことは忘れてしまいがちですが、今こそ花粉症を根本から治す舌下免疫療法の開始時期です。舌下免疫療法とは、2014年から始まった長期寛解・治癒を期待できる新しい治療で、舌下にスギ花粉に対するスギ花粉舌下液(商品名:シダトレン)を投与する、免疫治療です。その他に、2015年から始まったダニアレルギー性鼻炎に対するダニ舌下錠(商品名:アシテア、ミティキュア)もあります。スギ花粉とダニアレルギーのみが現在対象疾患となっています。治療期間が長く、花粉が飛散していない時期も治療を継続しなければならない根気のいる治療です。まだ、成人及び12歳以上の小児にしか適応がありませんが、いずれ幼児や児童にも適応が広がりそうです。

気になるところは、効果だと思いますが、以前から行われていたアレルギー物質を少しずつ注射していき、体に免疫抗体をつくっていく皮下免疫療法とほぼ同等の効果が認められています。全症例の2割に全く効かない人がいるものの、残り8割の人には何らかの効果が見られると言われております。今回、治療開始し3年目の治療成績が報告されておりますが、全体の3割の方が3年で寛解し、1割の方で治癒していると言われています。寛解率でいうと、1年目で17%、2年目で26%、3年目で33%の寛解例の報告があります。

また、薬物療法よりも効果が高かったとの報告もあります。

花粉症の時期に抗ヒスタミン剤というアレルギー症状をおさえる飲み薬や鼻にさす点鼻薬など薬物療法で改善されなかった方、コントロールのつかなかった方には、舌下免疫療法がお勧めではないでしょうか。それ以外にも、重症度にかかわらず、スギ花粉症に悩んでいる方、対処療法薬の使用量を減らしたい方のほか、将来受験や妊娠を控えた若年の方にもお勧めします。

もう一つ気になる副作用があります。スギ花粉症の方へスギ花粉舌下液を投与することで、口腔内が腫れたり、掻痒感がでたりする方がおります。また、極めて稀ですがショックをおこす方もいらっしゃるので、スギ花粉が飛んでいない今の時期に始めるのでベストです。2週間かけて、徐々にスギ花粉舌下液の量を増やしていきます。2週間~4週間に1度は通院が必要で、最低3年間は通院が必要になります。初回投与は病院の中で実施し、30分くらい経過をみて、副作用発現の有無の確認が必要になります。舌下免疫療法を希望する方は、時間に余裕をもって受診するようにしてください。

(T・K記)

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慢性便秘の治療と対策

慢性便秘の治療と対策

平成30年4月2日 発行

概ね3日以上排便がなく、不快感を伴う場合に「便秘」と診断しますが、少量の便が頻回に出て残便感が続いている場合も、便秘と言えます。このような状態が長く続くのが「慢性便秘」です。

女性に多く、70歳以上になると急増しますが、80歳を超えると男性の方が多くなります。  大腸がんや潰瘍性大腸炎など消化管の病気によって腸管が細くなることで起こる「器質的便秘」、甲状腺機能低下症などで消化管の動きが悪くなって起こる「症候性便秘」、咳止めや膀胱の薬など消化管の動きを悪くする副作用のある薬が原因で起こる「薬剤性便秘」、これらは原因がはっきりしている便秘です。

しかし便秘は原因がはっきりしない場合が多く、食事の内容や運動不足などの生活習慣や、ストレスなどによって、消化管の動きが悪くなって起こると考えられ、「機能性便秘」と呼んでいます。腹痛や腹部不快を伴って繰り返される場合は「便秘型過敏性腸症候群」の可能性があります。

便秘の治療においては、上記のどの便秘かの診断が重要になります。下血など大腸がんや腸の炎症が疑われる場合には、大腸内視鏡検査を行って診断をつける必要がありますし、消化管の器質的な病気がないにもかかわらず便秘が続く場合は、甲状腺などの内科的な病気の可能性や、他の病気で服用している薬の副作用を疑います。

上記の原因が否定された場合は、機能性便秘としての治療を考えることになります。  便秘薬はその効き方から、①便を軟らかくして出しやすくする薬、②大腸を刺激して動きを良くして排便を促す薬、③便の出口である直腸を刺激して排便させる薬、④便を膨張させて、かさを増すことで腸を刺激する薬、⑤小腸に作用する薬、に分類されます。

①は酸化マグネシウムの製剤で、マグラックスなどの商品名で販売されています。浸透圧を利用して便の中に水分を引き込み、便を軟らかくします。即効性はありませんが、長期に服用しても安全で、便秘治療の基本となる薬です。腎臓の悪い方はマグネシウムが蓄積して、不整脈などの副作用が出ることがあるので注意が必要です。

②は刺激性下剤と呼ばれ、センナ、センノシド、プルゼニド、ラキソベロンなどの商品名で販売されています。市販薬のコーラックもこの分類です。即効性がありますが、腹痛を起こしやすく、長期に服用していると効果が落ちるので、①を服用しても出ないときに頓服で使用することをお勧めします。また便秘に効果のある漢方薬のほとんどに、大黄という生薬が配合されています。大黄も刺激性下剤なので、漢方薬だから安全とおもって漫然と飲み続けてはいけません。

③は座薬や浣腸です。レシカルボン座薬は直腸で溶けて二酸化炭素を出すことで直腸を刺激して排便を促します。グリセリン浣腸はグリセリンの体積で直腸を刺激するとともに、潤滑効果もあります。刺激性下剤の一種ですが、経口剤と違い腹痛や連用による効果減弱は少ないですが、便が直腸まで到達していなければ効果がありません。

④バルコーゼ、過敏性腸症候群の治療薬ポリフル、コロネルは、便のかさを増して、水分を引き込む作用があり、長期に連用しても安全ですが、水分をたくさん摂らないと効果が出にくく、かえって便秘を悪化させることもあります。

⑤古くから使われているヒマシ油は、小腸を刺激して排便を促します。最近発売されたアミティーザという薬は小腸の水分を増やし、便を大腸に押し流す、新しい作用機序の薬です。価格も高く、腹痛や吐き気の副作用もあるので、従来の便秘薬で効果が得られなかった場合に検討すべきとおもいます。

成人の大腸には1,000種以上、約106兆個の腸内細菌が棲んでいて、その重量はおよそ1.5Kg です。この腸内細菌叢が大腸の調子に大きな役割を果たしており、ビオフェルミン、ミヤBM、ラックビーなどの乳酸菌製剤も、便秘に有効です。

規則正しい生活習慣と適度な運動、そして繊維分の多い食事を摂ることは、腸管の運動を安定化させ、排便習慣を維持するのに大切な対策であることは、言うまでもありません。

(M・S記)

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帯状疱疹が予防できるようになりました

帯状疱疹が予防できるようになりました

平成30年2月1日 発行

帯状疱疹とは

帯状疱疹の原因は子供の頃に罹患した水ぼうそう(水痘)のウイルスです。

水痘ウイルスは水ぼうそうが治った後も体内に潜んでいるため、加齢やストレスなどで免疫力が低下した時に、帯状疱疹として皮膚に赤い発疹が現れ水ぶくれに変化していくといった皮膚症状で発症してきます。部分的に以前の水ぼうそうがぶり返してきたような状態ですが、多くの場合発疹は体の片側の胸や背中に出てきます。頭頸部や顔などにも出ることがあり、頭頸部に出た場合は重症化すると視力障碍や顔面神経麻痺の原因になることもあるので注意が必要です。

帯状疱疹後神経痛

ほとんどの場合、皮膚症状に加えて発疹のでている範囲やその周辺に、ヒリヒリ・ピリピリした痛みを伴うようになります。また、皮膚症状のでる前に、痛痒いような神経症状だけが先行してみられることも日常診療の中でしばしば経験されます。程度にもよりますが、その痛みをしゃく熱感、電気ショックのような痛み、あるいは刺すような痛みと表現される患者様もいる程です。さらにその痛みが数か月から最大で数年間という長い間持続してしまう帯状疱疹後神経痛に移行することがあるため、抗ウイルス剤による初期治療がとても重要になります。神経痛に移行した場合の治療には各種鎮痛剤が使用されますが、コントロールが難しいこともあり、専門のペインクリニックを受診しなければならないケースもみられます。

50歳以上に成人の帯状疱疹ワクチンが承認されました

帯状疱疹は、80歳までに3人に1人が経験することが推定されており、合併症である帯状疱疹後神経痛の罹患率は加齢とともに上昇します。さらに前述した神経障害や顔面神経麻痺のみならず、帯状疱疹は髄膜炎や脳炎のリスクにもなりえるため、帯状疱疹予防は重要視されていました。

最近、大人になってから水痘のワクチンを接種することで、帯状疱疹の発症率が低下するという報告もみられるようになり、50歳以上の方は帯状疱疹を予防する目的で水痘ワクチンを接種することが出来るようになりました。助成金制度などはなく全額自費で、効果の持続は約10年程度とされています。関心のある方は、一度かかりつけ医に相談されてみてはいかがでしょうか。

(Y・I記)

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