目黒区医師会ロゴ

目黒区の骨粗鬆症検診について

目黒区の骨粗鬆症検診について

令和5年6月1日 発行

令和5年10月から目黒区でも骨粗鬆症検診が開始されることになりました。それに先立ちまして、目黒区の骨粗鬆症検診の目的とあり方についてお伝えします。

骨粗鬆症は椎体、前腕骨、大腿骨近位部などの骨折が生じやすく、その対策が医療のみならず社会的にも重要な課題となっています。日本骨粗鬆学会の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン二〇一五年版」によると、わが国においては、人口の急速な高齢化に伴い骨粗鬆症の患者数は年々増加し、現在では一三〇〇万人と推測されています。骨粗鬆症は単なる「骨の老化現象」ではなく「骨の病的老化」で、明らかな「疾患」であり、骨折は骨が脆くなるために起こる合併症で、予防並びに治療が必要である、としています。また、二〇〇〇年アメリカの国立衛生研究所( NIH )で開催されたコンセンサス会議において骨粗鬆症は「骨密度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大した骨格疾患」と定義されています。

このような気運の中、日本でも骨粗鬆症および予備群を発見するために骨粗鬆症検診が行われるようになりました。骨粗鬆症検診の目的は、無症状の段階で骨粗鬆症およびその予備群を発見し、早期に介入することです。予備群を発見するためには原発性骨粗鬆症の診断基準による「骨量減少」に相当する人を見出すことが必要です。そのため骨粗鬆症検診ではスクリーニングを目的とする骨量計測が欠かせません。医療面接と骨量測定の結果から「要精検」、「要指導」、「異常なし」に判定するのが一般的です(図)。

骨粗鬆症の主な危険因子は、女性、高齢、低骨密度、既存骨折ですが、そのほかにも図にあるような多くの危険因子が知られています。

目黒区の骨粗鬆症検診においても対象は40歳以上の女性で、問診票による医療面接において既存骨折の有無など骨折の危険因子をお聞きします。骨粗鬆症における骨折リスクについて例を挙げますと、既存骨折がある場合は約2倍になり、特に既存椎体骨折があると椎体骨折リスクは約4倍に高まります。喫煙は骨折リスクを1.3倍に、飲酒は1.4倍に高めます。またステロイド薬は量にもよりますが骨折リスクを約2.3倍に高め、両親の大腿骨近位部骨折歴でも2.3倍に高めると言われています。逆に活発な運動や日常生活活動は骨折リスクを20〜40%、最大で50%低減させる効果があるとの報告もあります。

また、目黒区の骨粗鬆症検診においてはその診断精度を向上させ、信憑性を高めるため骨量測定は腰椎、大腿骨近位部または前腕の骨密度測定により判断する予定です。判定は健康増進法に基づき骨量測定値(DXA)がYAM(Young Adult Mean「若年成人平均値」)の80%未満を「要精検」、YAMの80%以上90%未満、もしくは90%以上で骨粗鬆症の危険因子がある場合を「要指導」、YAMが90%以上で危険因子がない場合を「異常なし」とします。「要精検」もしくは「要指導」の方は整形外科専門の医療機関での指導または治療をお勧めいたします。

骨粗鬆症を早期に発見し、骨折のない健康で活力ある生活を続けていただくために対象の方は是非骨粗鬆症検診をお受けいただきたいと存じます。

骨粗鬆症の危険因子について

(M・H記)

knowledge_box-bottom
一覧へ戻る