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小児の視力低下を見逃さないで

小児の視力低下を見逃さないで

令和5年4月1日 発行

子どもの視機能は、生後1ヶ月頃から両眼でものをはっきり見るということにより3歳頃までに急速に発達し、6〜8歳頃までにほぼ完成します。乳幼児期の眼球内の疾患や、強い遠視や乱視などの屈折異常や斜視があると正常な視機能の発達が妨げられます。異常に気が付かずにこの大切な視覚の感受性期を過ぎてしまうと、眼鏡やコンタクトレンズ、手術などで矯正しても生涯良好な視力を得ることの出来ない「弱視」となってしまいます。

子どもは見えにくくても、生まれてからその見え方に慣れているため、自分から見にくいと訴えることはありません。日頃の様子から保護者が気付く場合もありますが、片眼が弱視の場合は良い方の眼で補っていて周囲からは気が付きにくく、発見が遅れがちになります。

これまでも、自治体では自覚的な視力検査が可能になる3歳児健診に視覚検査を導入して、疾患の早期発見に取り組んできましたが、一次検査が家庭で行われること、3歳児では検査時の応答に正確性が低いことなどのため、多くの弱視が見逃されて来ました。屈折検査を併用すれば弱視の発見率が上がることは示されていましたが、実際には検査に時間がかかることや、検査機器と検査員の確保が難しいことから長年の課題となっておりました。

2015年以来、日本でも発売されている、簡便なポータブルカメラ型の屈折、眼位スクリーニング機器、ビジョンスクリーナーは、操作が簡単で、1メートル離れた距離から両眼同時に短時間で検査出来るため、個人差はありますが生後6ヶ月くらいから検査可能であり、早期発見のためのスクリーニングに大変有用です。しかしながらこの機器で視力測定が出来る訳ではなく、正確な診断には、場合により調節麻痺剤を用いた精密屈折検査、固視、眼位、眼球運動、立体視検査と、眼科医による眼の診察が必要です。

目黒区では、今年2月から3歳児健診をお受けになる全員の方に、この機器を用いたスクリーニングが開始されました。従来のアンケート方式による問診と、家庭での保護者が行う視力検査の結果、問診上、異常項目がある場合や左右いずれかでも0.5以上の視力が確認出来ない場合、また健診会場での屈折眼位スクリーニングで異常を認めた場合には精密検査依頼票にて精密検査の勧告を受けることとなります。勧告書が届いたら、必ず眼科を受診して精密検査をお受け下さい。

今後は斜視や弱視の発見率がさらに向上し、疾患の早期発見、早期治療が大いに期待出来ると思われます。治療は適切な時期に開始し根気よく継続することが重要です。屈折異常の治療には治療用眼鏡の終日装用、視力の出やすい方の眼を遮蔽して行う弱視訓練、斜視の程度によっては手術が必要になることがあります。

3歳児健診に限らず、気になる症状があればいつでも保険診療でこの機器による屈折、眼位のスクリーニングを含む眼科診察が可能です。お子さまが生涯にわたって良好な視機能を得るために積極的に眼科健診を受けましょう。

(F・K記)

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