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麻しん(はしか)は、怖い病気です。

麻しん(はしか)は、怖い病気です。

平成30年8月1日 発行

あなたが平成3年以降の生まれでしたら、麻しん予防接種を2回定期接種として受けられています。よって、あなたは麻しんに罹ることは、(2回受けていれば)ほぼありません。

あなたが昭和52年から平成2年生まれでしたら、麻しん予防接種を1回定期接種として受けられています。1回では麻しんに罹る可能性があります。(中には1回も受けていない方がいます)

あなたが昭和52年以前の生まれでしたら、幼少期麻しんに罹ったか?任意接種として麻しん予防接種を1回、あるいは2回受けたか?です。

あなたが麻しんに罹ったことがない、かつ麻しん予防接種を1回も受けていない人でしたら、いつか麻しんウイルスに出会った場合、100%麻しんに罹ってしまうでしょう。

是非、近いうちに麻しん予防接種を2回(少なくとも1か月以上あけて)受けて下さい。

そして、あなた自身とまだ予防接種を受けられる年齢に達していない赤ちゃんを麻しんから守ってあげて下さい。

2018年3月23日4年ぶりの麻しん患者が沖縄県で出ました。タイで感染した旅行者でした。その人から2次、3次と感染が拡大し、5月上旬までに沖縄県では99人麻しんに罹りました。その7割は予防接種を受けていない人です。また患者の7割は20代から40代でした。人口の95%が麻しん予防接種を2回受けていれば、麻しんの流行は起きなくなります。しかしながら、平成3年以降の生まれの世代でも麻しん2回接種を完了している人の割合は、90%にも達していません。そこで沖縄県では乳児を守るために、4716人の乳児(6~11か月児)に緊急接種を行いました。

麻しんがなぜ怖い病気かと言いますと、非常に伝染力が強いウイルスなので、麻しんに罹ったことがなく予防接種もしていない人は、ほぼ100%感染してしまうのです。感染するとウイルスは免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、一過性に強い免疫機能抑制状態を生じさせるため、麻しんウイルスによるものだけでなく、合併した別のウイルスや細菌などによる感染症が重症化してしまいます。

麻しんに罹ると約1000人に1人、死亡します。乳幼児では肺炎が、成人では脳炎が最大の死亡原因となっています。まれに失明することもあります。

もう一つ、是非知っておいてほしい怖いもの、稀ですが麻しん合併症の一つであるSSPE亜急性硬化性全脳炎(Subacute sclerosing panencephalitis)です。特に2歳以下で麻しんに罹った場合、平均7年後に多様な神経症状が出現し多くの場合やがて死に至ります。これは麻しんウイルスが脳内に残存し、脳を破壊していくからです。これらの怖い病気は2回の麻しんワクチン接種で予防することが出来ます。

2015年3月27日WHO西太平洋地域事務局が日本は麻しん排除状態にある、と宣言したことをご存知でしょうか。遺伝子を調べることにより、その麻しんウイルスの由来を知ることができます。日本土着の麻しんウイルス株、遺伝子型D5は2010年5月を最後にいなくなりました。2007年麻しん輸出国と揶揄された日本ですが、今では輸入国になりました。

観光立国を目指し、さらに2020年東京オリンピックを開催するのですから、麻しん輸入を阻止するためにも、観光、交通機関に従事する者は、特に麻しんの抗体価を確認するか、あるいは予防接種を2回受けておくことが必要です。

また平成19年厚労省告示第442号において、「医療、福祉、教育に係る者について予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ麻しんの予防接種を必要回数である2回接種していない者に対する予防接種を推奨する」となっています。この告示では対象を上記の場において実習がある者、ということですが、常時上記の場において従事しているものについて、必要があることは言うまでもありません。

結論としましては、怖い麻しんの流行をなくすため、麻しんに罹る可能性のある人は、ワクチン接種を受ける、特に幼児は言うまでもなくです。さらに医療、福祉、教育、観光、交通に係る人にとってワクチン接種は必須です。こうして人口の95%が麻しん予防接種を2回受け、麻しんの流行がない国に一日も早くしていきましょう。

注、麻しん風しん混合ワクチンの供給は最近改善して来ましたが、場合によっては予約を必要としますので、受診前に確認することをお勧めします。

(K・N記)

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