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過去の病気と患者さんも医師側も思っていた梅毒が大流行!!

過去の病気と患者さんも医師側も思っていた
梅毒が大流行!!

平成29年10月2日 発行

性病の一つとして有名ではあるが、実際にお目にかかることがなかった梅毒に感染している人が近年急増しています。

梅毒患者さんが開業医でも、発見され出したのはここ10数年ですが、ここ2-3年は爆発的に増加している体感があります。感染症なんだからある一定数の患者さんがいれば、パンデミックでは無いですが大流行するのは当然。なぜ、近年になって梅毒感染者が増加しているのか、いくつかをエビデンスはありませんが、考えてみました。

1:医師が梅毒のことを詳しく知らない。

2:若い世代において、性に関する認識が大きく変わっている。

3:外国人観光客の増加に伴い、海外から梅毒が流入している。

4:性風俗の形態が変化した。

5:梅毒なんて過去の病気だと多くの人が考えてしまっている。

1:医師が梅毒のことを詳しく知らない。

梅毒感染の初期症状として硬結、硬性下疳が有名ですが、これ自体を若い医師は写真でしか、見たことがないと思われます。硬結とは感染初期に小さな小豆大のブツブツができることで、見慣れていない医師だと、毛穴の感染症かな?と診断してしまうような病態です。この時に両鼠径部のリンパ節を触診すれば、ひょっとしたら梅毒かもと考えるハズですが見逃してしまうことも多いようです。

2:若い世代において、性に関する認識が大きく変わっている。

性病の一つである「淋菌」を聞いたこともない病気とおっしゃった患者さんも複数人経験していますし、梅毒という性感染症自体をご存知ない方もかなりの数いらっしゃります。性行為と言っても、自分は当たり前の行いであったと考えていても、第三者から見た場合は一般的ではない動きをしている場合もあり(このあたりはご想像にお任せします)ますし、オーラルは性行為では無い、との認識を持った若者も多いのです。

3:外国人観光客の増加に伴い、海外から梅毒が流入している。

梅毒ってもともとアメリカ大陸の風土病であったものを、コロンブスらがヨーロッパに持ち込んで世界中に拡散した、と一般的に言われています(真偽は不明)。まあ、それ以前にアメリカ大陸に到達していた人も多数いるために正確とは言えませんが、少なくとも江戸時代には梅毒が日本でも感染症として存在しています。海外との交流を長崎の出島に限定したにも関わらず、全国で梅毒感染者が出ています(検査をしたわけじゃなく、病態から考えての診断)。感染症って交通手段が格段に劣っていた江戸時代、それも自由に往き来ができなかった時代でさえ、猛烈なスピードで拡散していたのです。日本であまり流行していなかった梅毒感染が近年増加しているのが、日本に訪れる外国人数の増加と同様に右肩上がりなのは、単なる相関関係であり、因果関係では無いかもしれませんけど…。

4:性風俗の形態が変化した。

梅毒感染が急拡大している原因として

近年はセックスワーカーをあっせんする業者(デリヘル)が増加しています。店舗型の業者に比べて感染症の検査を徹底できていない可能性もあります。店舗型の風俗店であるソープランド等は定期的に性感染症のチェックを行なっているのに、デリバリー風俗はその検査が定期的に行われていないのでは?ということです。また素人の人も昔は、若い女性は同世代と性交渉をしていたが、最近はインターネットなどを介して年齢の離れた男性と関係を持つ人もいる。年上男性が実は梅毒に感染していて、女性にうつしてしまうケースがあり、昔はありえなかった手段で異性と出会い性交渉をすることが梅毒感染者増大の原因としてあげられています。

5:梅毒なんて過去の病気だと多くの人が考えてしまっている。

梅毒の第一期と呼ばれる感染後3週くらいで出現する、硬結・硬性下疳も無治療で症状が回復することがあります。また、梅毒に感染しても症状が出ない場合もあります。となると梅毒の第二期の症状であるバラ疹などが出現するまでに、性交渉をしてしまうと第三者に梅毒を移すことになるんです。また、梅毒は1度罹ったから2回目は感染しないような免疫がつく感染症ではありませんので、何回でも感染を繰り返します。

心当たりがあれば医療機関を受診をすることをお勧めいたします。

(O・K記)

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