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夏に気をつけたい結膜炎

夏に気をつけたい結膜炎

平成27年8月3日 発行

今年も暑い夏がやってきました。この季節に気をつけたい病気に結膜炎があります。感染性の結膜炎は、主に充血と目やにを症状とした目の病気です。原因としてはウイルスによるもの、細菌によるものとに分けられます。ウイルス性結膜炎には、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎があり、細菌性結膜炎には肺炎球菌、ぶどう球菌、ヘモフィルス属など、特殊なものとしては淋菌によるものがあります。

ウイルス性結膜炎

≪流行性角結膜炎≫

アデノウイルス8型(他に19型など)の感染が原因で、1週間前後の潜伏期間の後に発症します。「はやり目」と呼ばれている結膜炎で、ほかのウイルス性結膜炎より結膜炎の症状が強く、目やにや充血、腫れ、痛みも伴いますが、通常は10日くらいで軽減します。耳の前にある耳前リンパ節が腫れて痛みを伴うことが多いです。多くの症例で発症7~10日後に、角膜に点状の濁りが出ることがあります。確定診断としてウイルス学的検査がありますが、感度は50%くらいです。特異性は100%ですので、陽性であれば確定です。

≪咽頭結膜熱≫

アデノウイルス3型(他に7型など)の感染で起こります。小児に多く学校、プールの水を介して感染することがよくあるので「プール熱」とも呼ばれています。潜伏期間は5~7日で、結膜炎の症状と共に、のどの痛みや発熱を伴い、風邪のように全身がだるくなったり下痢をしたりします。耳前リンパ節の腫れと痛みがあることが多いです。

≪急性出血性結膜炎≫

エンテロウイルス70型の感染で起こり、潜伏期間が1日と短く、鮮やかな結膜下出血を起こすのが特徴の結膜炎です。成人に多く小児は少ない結膜炎です。耳前リンパ節の腫れや痛みは軽度のことが多いです。発症後1週間程度で治ります。これらのウイルス性結膜炎には、有効な特異的治療はなく、細菌の混合感染を予防するために抗生物質の点眼薬や炎症を抑える点眼薬を処方します。またこれらのウイルスの中には、感染力が非常に強いものがあるので、結膜炎にかかったら、周囲に感染させないように、手洗いなど十分注意してください

細菌性結膜炎

細菌感染による結膜炎で、主な起因菌は、肺炎球菌、ブドウ球菌、ヘモフィルス属などで、症状は結膜の充血や目やにです。ウイルス性結膜炎と異なり、有効な抗生物質の点眼薬があるので、短期間で治ります。ただし淋菌による結膜炎は、進行すると角膜に影響が及んで視力低下することがあります。

クラミジア結膜炎(封入体性結膜炎)

クラミジアトラコマティスによる感染症で結膜のほか角膜にも炎症が起き、進行すると視力にも影響を及ぼします。かつては「トラコーマ」とよばれ、主要な失明原因の一つでしたが、環境衛生がよくなった先進国では激減しました。一方、性交渉で感染したり、母親からの産道感染で赤ちゃんに結膜炎が発病することもあります。治療は、クラミジアに有効な抗生物質がありますが、病原体そのものの除去には少し時間がかかり、数か月くらい薬が必要になります。

アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎は、感染しません。原因は花粉やダニ、カビなどのハウスダストなどです。この時期にアレルギーを起こす植物は、春のスギやヒノキに代わって、イネやメヒシバ、オヒシバ、ブタクサ、ヨモギなどです。症状は、結膜の充血、目やに、瞼の腫れ、目のかゆみ、涙目などです。治療は、アレルギーを抑える点眼薬や炎症を抑えるステロイド点眼薬などです。

(N・M記)

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