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スポーツ雑感

スポーツ雑感

平成24年10月1日 発行

今年の夏は、日本中がロンドンオリンピックで熱く燃えた夏でした。日本のオリンピックにおけるメダル獲得で今回大きく変わったのは、今迄あまり話題に上らなかったような競技でも、メダルを獲得出来るようになった事です。この一つの理由はナショナルトレーニングセンターが出来たことや、国がやっとスポーツに対する財政的支援を始めたことが大きな理由だと思われます。しかし、従来もっと多くのメダル数を獲得していた柔道界の凋落ぶりは、目を覆うものでありました。これは巷間言われているように、選手の過密スケジュールによる肉体的、精神的疲労、国民・マスコミの過大な期待による精神的プレッシャー等々によるものが大であったことが考えられます。又、日本柔道の古来よりよく言われる「柔よく剛を制す」のような柔道とはほど遠く、「剛を制するには更に強い剛を」という国際柔道のスタイルに変わっている事も大きな理由と思われます。地下に眠っておられる嘉納先生がご覧になったらいかに思われるか・・・。講道館柔道の目指したものは何であったろう・・・。

目を国内に向けてみると、平成18年「教育基本法」が改正され「新学習指導要領」により中学3年間で8領域の武道(柔道・剣道・弓道など)の時間が割り当てられることになりました。全柔連(全日本柔道連盟)の調査では、中学生の約70%前後が柔道を希望すると見込まれています。

日本スポーツセンター等の調査では、中・高生のスポーツ外傷の発生率を見てみると、柔道は他の運動競技と比較してもアメフト・ラグビー・バレーボールに次いで第3位の外傷発生率(H22年度では10万人に対し17,536件/年)を生じています。更に重大な事には、重症頭部及び頚部外傷を生じ、アメフト・ラグビーに次いで、第2位の発生率(67件/10万人/年)を生じている事です。即ち頭部では死亡、頚部では重い後遺症を残すという事です。そこで、中学での武道必修化で全柔連が一番懸念している事は、
・必修化で柔道初心者が一斉に大量に発生する。
・授業担当の保健体育教員の質の問題。
・柔道初心者が初心者に教える-事故の多発
のような事が想定されます。事実、全柔連の調査では事故が多いのは
・柔道を始める時に多発。
・始めて1~2年に多い。
・小・中・高校生に多い。
・5・6・7月に多い。
と言う事が統計上判っています。即ち柔道の習い初めにはけがが多いので、十分に注意が必要で、特に運動に慣れない、上手く受け身が取れない時期は重度の事故が発生し易いという事を肝に銘じ、
一、健康あっての柔道。まず練習前の十分な健康チェック
一、安全の基本は受け身
一、熟練者であっても正しい投げ方、投げられ方。
一、練習環境に十分に注意を払う。

このような事を全柔連では徹底してやっていただけるよう、教育側にお願いしています。

(T・K)

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