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はしか(麻しん)は命定め!でも予防できる病気です!

はしか(麻しん)は命定め!でも予防できる病気です!

令和1年10月1日 発行

2015年3月、日本から日本土着のはしか(麻しん)ウイルス(遺伝子型D5)が排除されたと、WHOが認定しました。 これは麻しん予防接種が全国規模で実施され、遂に約95%の接種率が達成された結果です。 発病すると麻しんウイルスに対する有効な治療法はないため、死亡することもあります。 脳炎と肺炎が、麻しんの二大死因です。また感染力が非常に強い病気であり、まだ予防接種がなかった時代には、ほとんどの人が15歳までに麻しんに罹っていました。

江戸末期の1862年、麻しんの大流行があり、江戸だけでも239,862人の麻しんによる死者が寺から報告されました。1966年に、予防接種が可能になるまで、世界中で、猛威をふるい、人々の命を奪っていました。それ故に、はしかは命定めと言われました。

日本では1978年、麻しんの予防接種が定期化され、1歳で接種することになりました。 しかしながら、その後も麻しんは時々流行したため、2006年から1歳児と年長児、すなわち2回のMR(麻しん、風しん、混合)ワクチン接種が定期化されました。2008年には、キャッチアップとして、中学1年生と高校3年生の年代に、2回目MRワクチンを定期化しました。この5年間の経過措置により、1990年以降に生まれた人は、MRワクチン2回接種済となり、麻しんにかかる可能性はほとんどなくなりました。

現在麻しんにかかっている人はほぼワクチン接種歴がないか、接種1回のみの人です。ただし、1回でも接種していると、り患しても軽症になることが多いです。 昨今世界は狭くなり、海外から多くの人が日本を訪れ、また日本から多くの人が海外にでかけます。これに伴って、はしかウイルスが輸入されます。これには税関も入国審査もなく自由に出入国できます。

はしかウイルスはヒトの体内でしか生息できないため必ずや持ち込む人の存在があります。感染後約10日間の潜伏期間を経て、熱発、咳、鼻汁、結膜炎などの症状があらわれますが、この時点では他の風邪と見分けがつきません。しかしながら、カタル期と言われるこの時期が最も感染力が強いのです。もしこのカタル期の人が、航空機に乗っていたら、乗り合わせた全員が、麻しんに感染するかもしれません。少なくとも、保健所による健康観察下におかれ、行動制限をされることもあります。ただし、麻しんに免疫があれば、まず発病しないし、周囲への伝染の心配もなく、よって健康観察も行動制限も必要ありません。

現在、世界的に麻しんは増えています。予防接種が普及し、ほとんどの人は麻しんに罹らないようになったのでその怖さが薄れて、予防接種を受けない人が、(正確には子どもに受けさせない人も含めて)世界的に増加しています。 日本に先立って2000年に麻しん排除と認定された米国では今年は9月5日までに1,241人の麻しんが報告されました。これは1992年以来最大です。日本でも今年は8月までに676人が報告されていて、これは10,000人以上の大流行があった2008年以降では、2009年(732人)に次ぐ規模となっています。

麻しんは感染症法で5類に分類され、医師は診断後直ちに、当該者の氏名も含めて保健所に報告しなければなりません。また学校保健安全法では予防すべき感染症第二種、すなわち感染しやすいものとなっています。さらに学校における麻しん対策ガイドラインなどによれば、<麻しんは国民の健康保持のため国を挙げて排除することが必要な疾患であり、また排除しうる疾患である。該当する者の保護者には予防接種を受けさせるよう努める義務が課せられている。定期健康診断に先立って行う保健調査の機会等を活用して予防接種歴を確認する。また全職員についても確認する。>と記されています。

麻しんで命を落とす、あるいは後遺症として、脳障害、視力障害、聴力障害などに苦しむことのないように、健康な時に予防接種を是非受けることを推奨します。妊婦が麻しんにかかると重症になり、流産、早産になる場合もあります。妊娠する前に、予防接種が必要かどうか検討することを推奨します。

(K・N記)

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