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風しん第五期定期接種と先天性風しん症候群

風しん第五期定期接種と先天性風しん症候群

令和1年8月1日 発行

妊娠初期(主に12週まで)に妊婦さんが風しんに感染すると、子宮で胎児も風しんに感染し、様々な障害をもって生まれます。 これを先天性風しん症候群といいます。その確率は、妊娠1か月では最も多く約50%です。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、日本では2018年後半から風しんが流行中であり、MMR(麻しん、風しん、おたふく)ワクチン接種を確認してから日本に行くように旅行者に注意喚起しています。さらに風しんは妊婦と胎児にとって大変危険な病気であるから、この流行の間は風しんワクチン未接種で過去に感染歴のない妊婦は、特に妊娠20週までの間、日本に旅行してはいけない、と明言しています。

2020年東京オリンピック迄あと1年、それまでに風しん流行を抑え、妊婦さんにも安心して日本を訪れてもらい、オリンピックや観光を楽しんでほしいです。もちろん日本の妊婦さんが風しんに感染し、胎児に影響が出ることも、防止しなければなりません。どうすれば胎児を風しんから守ってあげられるのでしょうか?その答えは、私たちが風しんに罹らないことです。そのためには風しん抗体検査を是非受けて、そして抗体価が低かったら、是非MRワクチンも受けて胎児を先天性風しんから守りましょう。

あなたが1962年(昭和37年)4月2日から1979年(昭和54年)4月1日までの間に生まれた男性(現在39歳から56歳の男性)なら風しん抗体検査は無料で出来ます。この年代の男性は今まで公費で風しん予防接種を受ける機会がなかったこともあり、風しん抗体保有率が他の年代に比べて低いです。そのため、昨年12月にこの世代の男性(目黒区では約37000人)に対する予防接種・抗体検査の実施が決まりました。これを風しん第五期定期接種といいます。この年代の男性の抗体保有率を3年間かけて現在の80%から90%以上に高める計画です。該当された人には目黒区役所よりクーポン券が送られています。クーポン券が送られた方は、ぜひ抗体検査を受け、抗体価が低い場合はMRワクチンを受けて下さい。

現在は1歳でMRワクチン(麻しん、風しん混合ワクチン)、年長さんの時、さらに2回目のMRワクチンを定期予防接種として受けることになっていますが以下に示すように年代によって変遷があります。

では風しんというのはどのような病気なのでしょうか?風しんは風しんウィルスによる発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とする、伝染力の強い病気です。主に飛沫感染し潜伏期は2~3週間です。確定診断には抗体検査や遺伝子検査などが必要です。風しんを診断した医師は直ちに保健所に届けを出さなければいけません。

不顕性感染と言って、感染していても全く症状のないものから、稀に脳炎や血小板減少性紫斑病などの重大な合併症をおこすものまであります。最も重症な合併症が先天性風しん症候群です。妊娠初期に妊婦さんが風しんに感染した場合、胎盤や胎児が感染し、様々な問題が生じます。一番多いのが心臓病です。早期に見つけて治療をしないと重大なことになる可能性があります。

次に目の病気です。白内障、緑内障、網膜症、など失明の可能性があります。 耳にも問題が起きます。神経性難聴です。その他、低出生体重、小頭症、脾腫、黄疸、出血傾向、知的発達遅滞、甲状腺などの内分泌疾患、などが報告されています。さらに晩期的な肺疾患も報告されています。

母親が風しんに感染しなかったらこれほどの様々な症状に苦しまずに済むのです。くどいようですが、繰り返しです。妊娠する前の女性も含めて、予防接種を必要とする人が予防接種をうけ、とにかく風しんの流行を抑えることが重要です。

(K・N記)

生年月日などによる風しんワクチンの定期接種状況

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