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予防が大切 インフルエンザについて

予防が大切 インフルエンザについて

平成27年12月1日 発行

今年もインフルエンザの季節がやってきました。そこで今回はこの病気の特徴について少しお話ししたいと思います。インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染により発症する伝染性の病気です。普通の風邪と比べて症状が重く、人から人への感染力も非常に強く世界規模で流行することもあります。インフルエンザの語源はこの病気の流行が周期的に現れることから、16世紀のイタリアの星占いたちがこれを星の影響(influence)と考え、インフルエンザと呼んだといわれています。

 

インフルエンザの症状は一般的には38度以上の発熱、だるさ、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身の症状が強く、あわせて普通の風邪と同様に、のどの痛み、咳、鼻水などの症状もみられます。さらに乳幼児、高齢者、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ方は、重症化することが多いので、十分注意する必要があります。インフルエンザが流行した年には、高齢者の冬季の死亡率が高くなることもあり、人の社会的生活にも大きな影響を与える病気といえます。それでは予防策についてお話し致します。

流行前のワクチン接種

ワクチン接種の有効性については多くの議論があるようですが、発病を完全に阻止できなくても重症化防止の方法として有効であると報告されています。但しワクチンの効果発現は接種後約2週間必要です。インフルエンザウイルスは抗原性の違いからA型、B型、C型に分類されています。今まではワクチンには流行をおこしやすいA型2種類、B型1種類が含まれていましたが、今年からB型は2種類含まれ、A型2種類、B型2種類の4価のワクチンとなりました。B型には抗原性の大きく異なる2系統があり、どちらが流行するのか予測困難なため、B型も2種類とし、守備範囲を広げたわけです。このため少し値段が高くなってしまいましたが、B型については高い有効性が期待できます。

飛沫感染に対する注意

インフルエンザはインフルエンザにかかった人の咳、くしゃみ、唾液、鼻水などの飛沫と共に排出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することにより感染します(飛沫感染)。帰宅時のうがいや手洗いは是非励行して下さい。また、アルコール製剤による手指の消毒も効果があるようです。さらに空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下するので、外出時には不織布製マスクを着用したり、室内では加湿器などを使って適度な湿度( 50 ~60%)を保つように心掛けて下さい。乳幼児、高齢者、慢性疾患を持っている方や、妊婦、過労気味、睡眠不足の方はインフルエンザの流行期に、人混みや繁華街への外出を控えた方が良いでしょう。また狭い部屋に大人数で過ごす時には十分な換気も必要です。

 

それでも「インフルエンザにかかった」と思った時は最近では約10分程度で診断できるインフルエンザ抗原検出キットが広く利用され、発病後2日以内に使用すればウイルスの増殖を抑制し、有症状期間を短縮する抗インフルエンザウイルス薬も多種使用可能となっています。さらに、15歳未満の小児では使用を避けるべき解熱剤もあり、インフルエンザの流行期に突然38度の高熱がみられ、普段の風邪と比べて、だるさや関節痛、筋肉痛が強い時には、早めに「かかりつけ医」を受診するようにして下さい。尚、治療薬の耐性化については我が国では大きな問題になっていません。最後に、インフルエンザになり解熱しても、その後2日間はウイルスを排出している可能性があります。現在、学校保健安全法では「発症後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」を出席停止期間としています。日数の数え方はその現象がみられた日は算定せず、その翌日を第一日とすることになっています。これらの点を踏まえてインフルエンザ治癒後、職場や学校に行く時は、他人に感染させないように、咳、くしゃみをする時はハンカチやティッシュで口元を覆う、あるいは不織布製マスクをする等の心遣い(咳エチケット)も必要でしょう。

(T・A記)

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