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花粉症の季節です

花粉症の季節です

平成26年2月1日 発行

また今年も花粉症の季節がやってきます。日本人の4人に1人が花粉症だと言われ、今や花粉症は国民病と言われていますが、意外な事に広く知られるようになったのは戦後からで、1960年代から40年間で激増しました。今回は花粉症についてのお話です。

人は様々な病気になりますが、いつその病気にかかるかは予測できません。しかし花粉症はスギ花粉が飛散して症状が出現するため、予測ができる疾患です。つまり花粉飛散開始が予想され、あらかじめ薬を飲むなど対策が立てられるのです。季節がすぎれば症状はなくなりますが、花粉飛散の間は鼻や目の症状のほか、睡眠障害等が現れ生活の質が落ちます。花粉症で社会的に生産性が低下し、その経済的な損失は1.2兆円とも言われています。メディアなどからの飛散開始時期や飛散量等の情報をしっかり得て、あらかじめ対策をとっていきましょう。また黄砂や最近話題のPM2.5等の大気汚染はそれ自体がアレルギーを起こすかはわかっていませんが、花粉症を悪化させる可能性があると言われています。PM2.5の粒子は花粉よりもはるかに小さく、通常のマスクでは効果がありません。PM2.5の情報も公表されていますので、多い日は外出を控えるなどしたほうがいいでしょう。今年の花粉飛散量は全国的には例年並みか少なめと予想されていますが、10年前の例年比と最近の例年比では、2倍以上も違いがあるということを認識しておく必要があるでしょう。飛散開始が発表されたら早目に内服をすることをお勧めします。

最近では花粉飛散開始日の数日から1週間ほど前から薬を内服する予防的な治療が推奨されています。敏感な人は飛散開始前から症状が出ることがあります。鼻がムズムズするとか目がかゆいなどの症状がでたら内服治療を開始するといいでしょう。今では様々な薬が開発され、鼻水を抑えるのに有効な薬や、鼻づまりを抑えるのに有効な薬などもあります。薬を組み合わせて服用したりもできます。点鼻薬も改良され刺激が少ないものや、1日1回で済むものなどがあります。副作用(おもに眠気)や効果は個人差があります。花粉症は毎年やってくるのですから、医師と相談し自分にあった薬を見つけることが大切です。

花粉症は体質的なものなので、現在は完治させる治療方法は残念ながらありません。しかし体質を改善し、花粉症の症状が出なくなる治療法があります。減感作療法といい、スギ花粉のエキスを薄めた薬剤を少しずつ投与しスギ花粉症を起こしにくい体質へと変えていく方法です。現在ではこの方法が唯一根本的に花粉症を治すことができる治療方法です。従来は薄めた微量のエキスを腕の皮下に注射を行っていました。毎週少しずつ増量し一定量に達した後、月1回程度の注射を継続的に行っていく方法です。毎週注射に通う根気のいる治療法です。

しかしこの皮下に注射をする代わりに舌下免疫療法が保険診療で行うことができるようになります。舌下免疫療法とはスギのエキスを通院で注射するのではなく、自宅でスギのエキスを口の中にたらし、その後数分間保持し飲み込むだけの治療方法です。効果も皮下注射と同等かそれ以上と言われています。なにより通院の手間も省かれ、注射による痛みから解放されることは、減感作療法に興味のある方にはよいニュースでしょう。治療開始時期はスギ花粉の飛散が終了した後から行います。

しかしながら継続的に行うことには変わりなく、もともと体にあわないスギのエキスを投与するのですから、アナフィラキシーなどの副作用も少ないとはいえ起こる可能性もあります。医師の指示をしっかりと守って行わなくてはなりません。どこの医療機関でも行っているわけではありませんのでかかりつけの医師に相談してみてください。

(U・I)

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