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加齢黄斑変性

加齢黄斑変性

平成25年10月1日 発行

加齢黄斑変性とは

黄斑とは網膜の中心部のことで、ここに病気が起きると、見ようとする部分だけが見えなくなってしまいます。読んで字のごとく、高齢者がかかる病気で、80歳を超えると3%くらいの人に発症します。

年々増え続けている病気で、今や失明原因のトップクラス。問題は失明に至るまでの過程です。緑内障や網膜色素変性症も、肩を並べる失明原因ですが、こういう病気の場合はたいがい、視野の周りから順繰りに見えなくなってきます。中心の視力は最後まで残るので、まん中さえ見えれば、本も読めるしテレビも見える。

しかし、加齢黄斑変性の場合は、まず見えにくくなるのがまん中です。最初は中心が歪んで見えて、時が経つとどんどん視力が低下します。

この病気を早期に発見するためには、片目を閉じて碁盤の目のような、格子状の模様をみて見るとよい。中心部が歪んだり、色が変わって見えたら、それは危険信号です。実際、この方法は眼科の検査にも取り入れられており、インターネットで「アムスラーチャート」と検索すれば、すぐに手に入ります。

では、どうしてそんな病気が起きるのか。眼球といえば白くて丸い形を想像しますが、その内側にはもう一層、頑丈な膜があって、網膜や水晶体のような内部構造を、包み込むように保護をしています。

加齢黄斑変性とはこの頑丈な膜の細胞が、加齢とともに壊れたときに起きるもので、網膜の黄斑部を守りきれなくなった結果です。

治療

この病気にはいくつかのタイプがあって、一つは黄斑の細胞が枯れるように萎縮をしていくものです。こちらの方は有効な治療がありません。もう一つのタイプは血管を破壊する悪玉因子が出てきて、出血や浮腫など激しい病変を繰り返します。

眼底検査をすると自覚症状のない、前駆病変が発見できる時期があって、やがて本当に発症してしまうと、歪みを感じる初期病変から典型病変、瘢痕へと推移をして、視力が低下していきます。

こちらのタイプは、早い時期に見つかれば何とかなることが多く、今世紀に入って光線力学療法という治療が始まりました。これは、特殊なレーザー光を照射するもので、加齢黄斑変性症は「だんだん悪くなる」から、「視力が維持できる」というイメージに変わってきました。

そして、2008年からは画期的な薬剤が登場します。血管を破壊する悪玉因子を直接に抑制して、黄斑部を治療する方法です。この治療は早く開始するほどよく効いて、加齢黄斑変性症は「視力を維持する」から、「視力を改善する」病気に変わったように思います。

ただし、眼球の中に直接薬剤を注射するので、どうも気持ちが悪いし値段が高い。それに1回だけの注射で解決するものではなくて、再び悪化をした時には注射を繰り返さなければなりません。

まだまだ注射の回数や間隔など、試行錯誤をしているところがあって、今後きちんとした治療法が確立していくことでしょう。

予防

加齢黄斑変性の要因は加齢以外に、タバコや日光の強い日差し、ビタミンやカロチン不足などが因子として考えられています。前駆病変がみつかったリスクの高い方は、タバコをやめるといいし、サングラスも有効かもしれません。それに、最近はこの病気に有効なサプリメントも登場して、こちらの方も年々進化をしています。

(H・T)

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