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糖尿病の最新治療 新しい血糖降下薬(インクレチン関連薬)

糖尿病の最新治療 新しい血糖降下薬
(インクレチン関連薬)

平成23年4月1日 発行

先日、友人と食事中にペットのことが話題になりました。どうやら飼い猫が糖尿病になり治療をしているとのこと。猫は痩せて元気がなくなり、心配した彼が獣医さんに診せたところ、血糖値が高く糖尿病と診断されたようです。飲み薬(径口血糖降下薬)で効果がなくインスリン治療が始まり、毎日友人は猫にインスリンを注射しているそうです。猫は嫌な顔一つせず大人しく注射をされて、元気になってよかったと話す友人も嬉しそうでした。

獣医さんのお話では美食や運動不足が原因で犬や猫の糖尿病が増えており、高血糖で亡くなるペットも多いとのこと。動物の糖尿病は飲み薬が効きにくいようです。

人間でも同様に糖尿病が増えています。糖尿病の疑いのある日本人は2210万人と推定されています。人体でエネルギーの元となる糖分は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンにより空腹時血糖値100mg/dl以下に(食後も160mg/dlを超えない程度に)調節されています。食事に合わせて必要とされるインスリン量よりも分泌量が少なくなると、血糖値が上昇し糖尿病になります。日本人は遺伝的にインスリン分泌量が少なく糖尿病になりやすいため、血糖値を急に上昇させないようゆっくりよく噛んで食べることが大切です。運動により糖分を消費することも重要です。

食事や運動に気をつけていても血糖値が高い場合には、飲み薬やインスリン注射が必要となります。糖尿病の内服薬は、働きの違いにより大きく3つに分類されています。

膵臓に働きかけインスリンを出させる薬(インスリン分泌促進薬、アマリール・オイグルコン・ファスティックなど)、糖分の吸収を遅くする(αグルコシダーゼ阻害薬、ベイスン・グルコバイ・セイブル)、インスリンの働きを助ける薬(インスリン抵抗性改善薬、アクトス・メルビンなど)の3種類です。

これらは糖尿病治療に広く用いられいる薬剤ですが、薬が効きにくくなる、体重が増えて必要な内服量も増える、食事の前に血糖値が下がりすぎる(低血糖)などの問題もあり、十分に管理できていないのが現状です。そのためより良い糖尿病治療薬の開発が待ち望まれていました。

2009年12月、新しい薬(インクレチン関連薬)が日本でも使用出来るようになりました。昨年12月NHKの「ためしてガッテン」で紹介され、ご存知の方もいらっしゃるのではないかと思います。新しい薬剤は、消化管ホルモンの働きを強めることにより、膵臓からのインスリン分泌を調整する薬です。飲み薬(グラクティブ・ジャヌビア・エクア・ネシーナ)とより強力な注射薬(ビクトーザ・バイエッタ)があり、心配されていた低血糖や体重増加を起こしにくいと言われています。さらに動物実験では膵臓の保護作用が示され、心臓や血管にもよい効果があると期待されています。

日本ではすでに数十万人の患者さんが服用しておられ、糖尿病合併症の発症や進展の抑制にどれだけ寄与するのか注目されています。

しかし、どれほど優れた薬剤であっても、食事・運動療法に勝る薬はないことをお忘れなく!区民の皆様がすこやかな毎日をお過ごしになるよう願っております。

(S・K)

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