| 平成21年8月3日 発行
慢性腎臓病(CKD)とは「尿蛋白陽性などの腎疾患の存在を示す所見」、もしくは「腎機能低下」が3か月以上続く状態をいいます。最近CKDに対する取り組みがわが国を含め、全世界的に進んでいることをご存知ですか?
CKDが注目されている3つの理由
ひとつは、日本におけるCKDの患者数は1330万人、実に人口の12.9%と推定されており、膨大な数の患者が存在する事が明らかになったことです。またCKDが進行すると透析や移植が必要になる場合があります。慢性透析患者数は年々増加しており2008年末には28.3万人に及び、この数は日本人の460人に一人が透析治療を受けているということになります。
二つ目は、CKDは比較的早期から脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患を発症する確率や死亡率が上昇することが明らかになったことです。このことより健康を脅かす重要な疾患群だと考えられるようになりました。
三つ目は、CKDの治療が可能になってきたことです。「厳格な降圧療法」「尿蛋白の減少を図る」など、今ある治療法を十分活用した治療を行えば、腎機能の悪化や心血管疾患の発症を抑制できることが分かりました。
早期診断のためには
CKDの症状は易疲労感、倦怠感、食欲不振、嘔気、浮腫などですが、これらの症状は病気がかなり進行してから出現しますが、初期には自覚症状はありません。一般的には腎機能が低下する前から蛋白尿をきたすため、CKDを早期に発見するには尿検査が有効です。特に糖尿病による腎障害の早期発見には微量アルブミン尿検査が重要です。
治療のポイント
CKDと判断されたら原因疾患の検索を行います。また血液検査を行い、血清クレアチニン値を用いた推算式(eGFR)により腎機能を評価します。それをもとに病期を5段階に分類し診療計画を決定します。治療のポイントについては以下の通りです。
@生活習慣の改善
禁煙。メタボリックシンドロームなどの内臓脂肪が蓄積する腹部肥満では、蛋白尿や腎機能低下をきたしやすく、CKDの発症と深く関係していることが報告されており、肥満の是正が必要です。
A食事指導
減塩(食塩摂取量6g/日未満)、蛋白制限(必要に応じて)
B高血圧治療
降圧目標は130/80mmHg未満。降圧剤は腎保護効果、尿蛋白減少効果が確認されているACE阻害薬かARBが第一選択薬として推奨されています。
C糖尿病、耐糖能以上の治療
厳格な血糖コントロールにより糖尿病性腎症の進展を抑制できることが明らかにされています。
D脂質異常症の治療
脂質異常症の治療により尿蛋白の減少と腎機能低下抑制が期待できます。LDLコレステロールは120mg/dl未満(可能であれば100mg/dl未満)にコントロールすることが重要です。脂質異常症治療薬であるスタチンには、蛋白尿や微量アルブミン尿を減少させる効果が示されており尿蛋白を伴うCKDでは積極的な仕様が推奨されています。
E貧血の治療
CKDが進行すると腎臓で造血ホルモン産生が低下するため貧血になります。貧血が進行したらエリスロポイエチンという造血ホルモン剤の注射を定期的に行います。
CKDを予防するために
早期にCKDを発見して、適切な治療を行えば、病気の進行を食い止めることができます。年に一回は健診を受けて、尿蛋白などの異常を認めたら必ずかかりつけ医に相談しましょう。また糖尿病、メタボリックシンドローム、高血圧などの生活習慣病に関連するCKDが多く見られるため、食事指導、生活指導による生活習慣の改善や、必要に応じて治療をおこなうことがCKDの予防に大切です。
(T・S) |